20130505

どっどどどどうどどどうどどどどう

はくもくれん

 

 地元は白木蓮が咲く季節になっており、春になったなと思う。三月になると咲いて、白木蓮には人がフラフラと近づいていく。花びらが大ぶりで白く、目を引くからなのかもしれない。散歩中にわたしもフラフラと白木蓮の花に近づいて、垣根の向こうの家の人と目があってしまって、気まずく謝った。花が咲いているからフラフラとやってくる人間のことを、あんまり好きになれないなとわたしも思う。スウェットを着て、片手にリードを持ち、カバンを斜めにかけた人間は、どう考えても背景に「通りかかり」のストーリーがあるな、ということも思う。単に時間があったのかもしれないが、家の人が「掃いても掃いても終わらなくて困る花だ」ということを喋る。「午前に一回、午後に一回掃いてまだこんなに散らかる」と言うので、きちんとした人だなと思う。

 白木蓮は(白木蓮だとわたしが思ってきた花が実は白木蓮ではない可能性はあります)、花びらが大きくて、白くて、花びらだけがボトボトと落ちる。近所によく咲いていて、季節に外を出るたびに見かける。わたしの指よりは長さのある大ぶりの花びらだけ、先に落ちていく。花びらなので、風に飛び、歩道の脇にもよく溜まる。白い花びらなので、褪色していくのがよくわかる。端からだんだん茶色く変色していく。白いままの花びらと、茶色く縮こまった花びらが、同じ花だということがよくわかる。ぼたぼたと落ちて、庭に溜まるのは嫌だろうなあと思う。

 わたしは、花がだんだん枯れていくのを見るのが好きなので、白木蓮のことが好きなんだと思う。景気のいい大きな花びら、肉厚でしっとりして見える、だんだん茶色に変色していく、めちゃくちゃたくさん落ちる。変化があって楽しいなと思う。桜もきれいだけど、なにぶん花びらが小さい。大きいほうが楽しいと思う。そんなことは、近所の、困っている、一日に何度も掃き掃除をするきちんとした、庭を見つめる習慣がある人、に伝えても困るだろうことなので、「大変ですねえ」というただの相槌を打ってしまった。人と会話するとちょっと恥ずかしい。足元に犬がいるがあんまり会話に興味はない様子がある。犬は春になり、食欲があり日向でよく眠りたがる。

 

 依然としてぜんぜん元気がなく、なんとなくGoogleフォトを見返したが、つらいときにもつらいなりに生きていて、わたしもなかなか頑張っているなあと思う。自撮りの習慣はあまりないので、犬を抱えていたり、友人が撮ってくれていたりする。なんだかめちゃくちゃ大変だった記憶がある時期に、ニコニコしていることもあるし、美容院の帰りらしいが死んだ目をしていることもある。まだ子どもだなと思う自分の写真もあるが、わたしは子どもの頃から人とうまく喋れないし、美容院がほんとうに苦手で、「成人式があるから髪は伸ばしておいたほうがいい」という美容師さんの言葉を遮って、「でもどうしても切りたいんです」が言えなくて、すごくかなしかったことがある。恨みは成人式に向かってしまったが、「切りたくて……」が叶えられなかった無力感のほうが主題なんだろうと思う。コケシみたいなショートカットでニコニコしている写真があるので、切りたかったけど切れなかった無念と「切りたいと思った時に髪を切ることができるのだ!」という晴れやかさを感じる。美容師さんの、言いたいこともわかる。こんな無念と悔しさと「お金を払っているのに!? 切ってくれない!? そんなに似合わないんですか……?」という自己の…尊厳の…葛藤の…話になっていると思わないだろうし、わたしはやっぱり成人式と聞くと嫌な顔をするし、美容師さんはどうにか、どうにか髪を切って欲しいと思う。どうしても切れないときは客を帰して欲しい。

 わあ、髪は、どうにか、どうにか言ったら切って欲しい。無茶を言う客だな、みたいなことは言うかもしれない。そのあと、わたしのこころの無念のために、髪の毛を半分くらい刈り上げたりもした。似合うかともかく楽しかったし、いまそのときのことをふんわりしたままGoogleフォトを見ても、写真のわたしがニコニコとしていてよい。あと、単にショートカットが好きだ。いまは、ちょっと、ボブくらいまでは、伸ばしている。髪を短く切ってください、と言ったら切って貰える、ちょっとゴネられることはあるかもしれないが、ということを大人のわたしは知っているので、大丈夫です。

 

 あんまり本を読めていないが、図書館に行って本を借り返して借りて、を繰り返している。

 井戸川射子さんが芥川賞を取ったと聞いて、詩集を先に読んだ。

 女性と家族のことをもの思うので、あんまり得意ではないような気がするが、文章がきれいでいいな。

 現代短歌を何冊かと、エッセイを読んでいて、あんまり小説が読めていないが、文藝春秋芥川賞特集はできるだけ買っているのと、積んでいる本が何冊かあります。